エベレストベースキャンプ付近で高山病になってしまったのでレスキューヘリを呼び、クレジットカード付帯の海外旅行傷害保険を使った話
エベレストのベースキャンプ(標高5,364m)付近で急性高山病になってしまい、レスキューヘリでカトマンドゥまで帰り、病院で治療を受け、クレジットカード付帯の海外旅行傷害保険を使ったときの話です。
注意
この記事は私の体験談なので、現在は状況が変わっている可能性もあります。
目次
トレッキング出発前
世界最高峰のエベレストを間近に見てみたかったので、エベレスト街道トレッキングに行くことにしました。エベレスト街道のトレッキングツアーは日本の旅行会社でも取り扱っていますが、私は現地の旅行会社を利用しました。一口にエベレスト街道トレッキングと言ってもたくさんのコースがあり、どのコースにするか旅行会社の人と相談しながら決めていきます。私はエベレストのベースキャンプ、カラパタール、ゴーキョピークに行く全16日間のトレッキングコースにしました。
コースが決まると「高山病や怪我などでレスキューヘリを呼ぶと高額の請求をされるから保険には入っておいた方がいい。保険には入っているか?」と聞かれました。「クレジットカードに海外旅行傷害保険が付いている」と答えると、「それでOK」とのこと。念のためカードデスクに電話で確認してみたところ以下の場合以外なら保険は適用されるそうです。
保険が適用されないケース
- ピッケルやアイゼンなどの専用の登山用具を使う必要がある場合は保険が適用されない
- ロッククライミングをする場合は保険が適用されない
- 特別な持病を持っている場合は保険が適用されないことがある
旅行会社の人が紹介してくれたネパール政府公認のガイドさんによると、今回のトレッキングコースでは専用の登山用具は必要ないし、ロッククライミングもしないとのことなので、旅行会社の人が言うようにクレジットカード付帯の海外旅行傷害保険はエベレスト街道トレッキングでも適用されるようです。
保険の規約の違いや変更に注意
各クレジットカードに付帯する海外旅行傷害保険の細かい規約はそれぞれ異なりますし、規約は変わることがあるので、安心して海外トレッキングを楽しむためにも、出発前にお手持ちのクレジットカードのカードデスクに海外旅行傷害保険が適用されるトレッキングなのかどうか確認することをおすすめします。また、万一のことが起こってしまった場合、どれくらいの費用がかかるのか、手持ちのクレジットカード付帯の海外旅行傷害保険だけで足りるのかどうかも併せて事前に確認しておきましょう。
エベレストのベースキャンプまでの道のり
トレッキング日程(2012年3月11日~3月20日)
- 1日目: 飛行機でカトマンドゥ(標高約1,300m)からスタート地点のルクラ(標高2,840m)へ移動。ルクラ(標高2,840m)パクディン(標高2,610m)
- 2日目: パクディン(標高2,610m)ナムチェバザール(標高3,440m)
- 3日目: ナムチェバザール(標高3,440m) 高所に体を慣らすためナムチェバザールで2泊
- 4日目: ナムチェバザール(標高3,440m)プンキテンガ(標高3,250m)
- 5日目: プンキテンガ(標高3,250m)パンボチェ(標高3,930m)
- 6日目: パンボチェ(標高3,930m)ディンボチェ(標高4,410m)
- 7日目: ディンボチェ(標高4,410m)ロブチェ(標高4,910m)
- 8日目: ロブチェ(標高4,910m)ゴラクシェプ(標高5,140m)エベレスト・ベースキャンプ(標高5,364m)ゴラクシェプ(標高5,140m)
- 9日目: ゴラクシェプ(標高5,140m)カラパタール(標高5,600m)ゴラクシェプ(標高5,140m)
- 10日目: 高山病が悪化したためゴーキョピークに行くのを諦め、レスキューヘリでゴラクシェプ(標高5,140m)カトマンドゥ(標高約1,300m)
実際のトレッキングの行程はこんな感じでした。スタート地点のルクラで既に標高2,860mあり、空気が薄いです。標高が2,500mを超えているので、人によってはルクラに着いてすぐに高山病の症状がでます。よほど高所に慣れている方でないと、ベースキャンプに辿り着くまでに少なからず高山病の症状が出ると思います。
ルクラからベースキャンプまでの写真を載せていきます。道のり自体は険しいものではなく、ピッケルやアイゼンなどの専用の登山用具を使うことなく、ベースキャンプまで行くことができました。
エベレスト街道トレッキングの起点になるルクラ。
ルクラからしばらく進むと挨拶を返してくれる犬がいます。「ナマステ(ネパールでの挨拶)」って言うと前足を合わせてナマステの仕草をしてくれるかわいい犬です。
パクディンとナムチェバザールの間の道。
エベレスト街道で一番大きな村「ナムチェバザール」。ナムチェバザールではクレジットカードを利用できます。ただし、7~10%くらい手数料を取られました。利用できる国際ブランドはVisa、Mastercardです。ATMもありましたが、私が試したときは調子が悪かったようでキャッシングはできませんでした。
パンボチェとディンボチェの間の道。標高は4,000m以上あり、ここから先は富士山より高いところを歩いていくことになります。
ディンボチェとロブチェの間の道。
ロブチェとゴラクシェプの間の道。左下の動物はヤクとウシの雑種のゾプキョです。
ゴラクシェプとベースキャンプの間の道。
エベレストのベースキャンプ到着!標高5,364m!
高山病が悪化してからレスキューヘリを呼ぶまで
当初はエベレストのベースキャンプに行った後、カラパタールに登りエベレストを見てから、ゴーキョピークに行く予定でした。
しかし、カラパタールへ登ったときの私と妻の様子を見たネパール政府公認のガイドさんが、これ以上トレッキングを続けるのは危険だと判断しました。私たちの高山病の症状が悪化したからです。そこで予定を変え、下山することにしました。トレッキングのメンバーは私、妻、ガイドさん、ポーターさんの4人だけだったので、すぐに下山を決断できました。
ガイドさんの提案で下山にはレスキューヘリを使うことにしました。自己判断では歩いて下山するくらいはできそうでしたが、ここでの選択ミスは死に直結する可能性があります。ガイドさんによると、私たちくらい高山病の症状が出ていると歩いて下山する途中に死んでしまうこともあるそうです。
レスキューヘリで街に戻って病院で診察を受けるまで
レスキューヘリを呼んでもらった翌朝、ゴラクシェプにレスキューヘリが来ました。ここは標高5,140mで空気が薄いため、一度に全員は乗れないとのこと。なので、ペリチェまでは順番に一人ずつ運びます。ペリチェに全員揃ったら、そこからはルクラで燃料補給した後に、カトマンドゥの空港に向かいます。
カトマンドゥの空港についてレスキューヘリから降りると、数時間前までのつらさが嘘のように元気になります。高山病なので標高が低いところに戻ってくると症状が一気に軽くなります。
ガイドさんがトレッキングツアーを申し込んだ旅行会社に連絡を入れてくれていたので、旅行会社の方が空港まで車で迎えに来てくれていました。その車で病院に向かいます。ガイドさんも一緒です。
お世話になった「CIWEC Clinic」です。ネパール政府公認のガイドさんがお医者さんに高山病になってしまった経緯を説明してくれたので助かりました。病院に着いた頃にはかなり体調が回復していたので、私たちだけで病院に行っていたら高山病だったことを説明するのは大変だったと思います。クレジットカード付帯の海外旅行旅行傷害保険を使うのであれば診断書が必要になるので症状を正確に伝えることは重要です。
診断書にはトレッキングの行程から、どの地点から高山病の症状が出始めたのかまで詳細に記載されていました。診断結果は急性高山病で、37度代の熱もありました。熱が出るのは珍しいケースらしく、何か心当たりがないか聞かれました。心当たりと言えば、トレッキングに出発する数日前にインドのガンジス川で沐浴したことかな?免疫のない日本人がガンジス川に入ると体調を崩してしまうことがあるそうです。
病院代の支払いにはクレジットカードを使えたので、Visaカードで支払いました。利用できる国際ブランドはここでもVisaとMastercardで、病院代は1万円未満でした。
帰国するまで
カード会社に電話で海外旅行傷害保険を使いたいと伝える
病院からホテルに移動した後、直ぐにカード会社に電話で海外旅行傷害保険を使いたいと伝えました。海外旅行傷害保険が付いているクレジットカードを複数持っている場合、好きなカード会社1社にだけ連絡すればOKです。私の場合はアメックスに電話しました。疲れていたのでなぜアメックスを選んだのかよく覚えていないのですが、アメックスのカードデスクの対応が一番好きだからアメックスに電話したんだと思います。
アメックスに電話をすると、引受保険会社である損保ジャパン(2012年当時の話です。現在は引受保険会社が変わっています)の連絡先を教えてくれました。改めて、保険会社に連絡をし直します。保険会社の担当者に状況を説明すると、「今回診察を受けたCIWEC Clinicとは過去にやりとりをしたことがあるので、迅速に対応できそう、確認して折り返す」と言われ一度電話を切りました。
その後直ぐに電話がかかってきて「病院に確認して急性高山病であることを確認できたので、ヘリコプター代も含め治療費は保険が下りる、今後の治療費は病院で書類を書けばキャッシュレスで受けられるように手配した」とのことでした。併せて、保険金の請求には診断書、病院のレシート、レスキューヘリのレシートが必要なことも教えてくれました。
高山病はヘリで街に着いた途端に症状が改善されるので、病院で高山病と認められないことも可能性としては考えていました。最悪の場合、全額自己負担する覚悟はできていたので、こんなにあっさりと保険が下りてびっくりしました。損保ジャパンとアメックス、そしてガイドさんには感謝してもしきれません。
レスキューヘリの費用を支払う
レスキューヘリは旅行会社の人が手配してくれたので、旅行会社で支払いをしました。気になるレスキューヘリの値段は、8,750アメリカドル!2012年当時のレートだと約75万円相当です。支払いにはクレジットカードが使えたので、Visaカードで支払いました。利用できる国際ブランドはVisaとMastercardで、AMEXは利用できませんでした。
交通費のレシートは保険金を請求するときに必要になるので忘れずにもらっておきます。レシートにもレスキューヘリとして利用したことが明記してありました。
もう一度病院へ
前回病院に行ったときに「2日後にもう一度病院に来て」と言われたので、再度病院に行きました。健康状態をチェックしてもらい、もう大丈夫だとのこと。
帰国してから
帰国したら損保ジャパンから書類が届いていました。「事故受付の案内」と「必要書類の案内」です。
事故受付案内の別面には「保険金支払までの流れ」の図解がありました。
「必要書類の案内」によると、今回のケースでは保険金請求に必要な書類は以下の5つとのことなので用意します。
必要な書類
- 保険金請求書
- パスポートのコピー(顔写真のあるページと、日本入出国スタンプのあるページ)
- 治療費・薬代の領収書(原本)
- 診断書(原本)
- 交通費(レスキューヘリ費用)の領収書(原本)
用意すると言っても、「治療費・薬代の領収書」「診断書」「レスキューヘリの領収書」はネパールで手に入れているので、後はパスポートのコピーを取って、「必要書類の案内」に同封されていた「保険金請求書」を記入するだけです。
必要書類を揃えたら、「必要書類の案内」に同封されていた損保ジャパン宛の返信用封筒で返送します。帰国してからの手続きはこれで終わりです。
保険金受け取りとお金の話
ありがたいことに保険金は直ぐに振り込まれました。レスキューヘリに乗り、アメックスに電話をしたのが3月20日(火)、保険金が振り込まれたのが4月12日(木)です。アメックスに電話をしてから、保険金が振り込まれるまで23日しか経っていません。
ヘリコプター代と病院代は15日締め、翌月10日払いのVisaカードで支払ったので、引落日は5月10日です。引落日の前に、Visaカードの引落口座に保険金が振り込まれたので、実質的にキャッシュレスみたいな感じでした。
もし保険金振り込みがVisaカードの引落日よりも遅かったら
今回は幸いにもVisaカードの引落日の前に保険金が振り込まれましたが、逆になる可能性もあります。保険金の振り込みが引落日よりも遅くなってしまうと、今回のように金額が大きいケースでは現金を用意するのが難しいこともあると思います。
そんなときは「あとからリボ」も選択肢の一つです。私は基本的にリボ払いや分割払いなどの手数料のかかる支払い方法はおすすめしていませんが、保険金が振り込まれてから直ぐに全額繰り上げ返済をしてリボ手数料を最小限に抑えるのであれば、あとからリボは有効な選択肢だと思います。
あとからリボとは
1回払い、2回払い、ボーナス一括払いで支払った利用分を、後からリボ払いに変更できるサービスです。今回のケースで言うと、高額の支払いになってしまったレスキューヘリ代だけをリボ払いに変更することができます。
ただし金額が大きいと短期間のリボ払いでもそれなりの手数料になります。ざっくりとした計算ですが、例えば75万円分をあとからリボにしたとすると、リボ払い手数料の実質年率が18%の場合、30日後に全額繰り上げ返済したとしても11,250円もリボ払い手数料がかかってしまいます。
あとからリボにできる利用分かどうか、いつまでに1回払いからリボ払いへの変更手続きをすればいいかはカード明細を見れば分かるようになっていると思います。もし分からなければカードデスクに聞くと教えてくれます。上のVisaカードの明細書で言うと、#印のある利用分はあとからリボにできます。3月20日に支払った8,750ドルのレスキューヘリ代「FLIGHT CONNECTION INT.PVT(KATHMANDU)」にも#印があり、あとからリボにできることが確認できます。
保険会社の定める為替レートで日本円に換算されます
支払った金額(レスキューヘリ代と病院代)は補償してもらえました。ただし、外貨を日本円に換算するレートは、保険会社が定めたレートです。例えば、今回損保ジャパンの日本円からアメリカドルへの換算レートは1ドル=83.38円だったので、8,750ドルのレスキューヘリ代は729,575円として計算され、その金額が補償されました。保険金として振り込まれた738,358円は、これに病院代を加えた金額です。
しかし上のVisaカードの明細ではレスキューヘリ代は737,047円(換算レートは1ドル=84.234)になっています。補償された金額よりも7,472円高いです。Visaカードの場合だと、Visaインターナショナルが定める基準レートに、1.60〜2.20%程度の外貨取扱手数料(今回利用したVisaカードの外貨取扱手数料は1.63%)を加えたものが換算レートになります。なので補償された金額よりも実際に支払った金額の方が高くなってしまっているんだと思います。
とは言え、クレジットカードの換算レートは、両替所での現金両替や、海外送金よりも良いことがほとんどなので、レスキューヘリ代の支払い方法としてはクレジットカードがベストだったと思います。そもそも75万円も海外に現金を持ってきてはいないですし、海外送金は面倒です。
より良い換算レートにこだわるのであれば、VisaカードではなくMastercardで支払っていれば、もう少し良いレートだった可能性があります。当サイトの独自調査ですが、Visa、MasterCard、JCB、American Express、Diners Clubの換算レートを比べたところ、MasterCardの換算レートが一番良かったです。
ポイントまで考慮するとお得でした
レスキューヘリ代と病院代の分もしっかりとVisaカードのポイントはたまっていました。なので先程、レスキューヘリ代は補償された金額よりも、支払った金額の方が7,472円高かったという話をしましたが、ポイントを考慮すれば個人的にはむしろ得したと思っています。
ANA Visaゴールドカードで支払ったので、737,047円のレスキューヘリ代の支払いだけで、ANAマイルが7,370マイルたまりました。1マイルの価値を語りだすと長くなるので割愛しますが、個人的には7,472円よりも、7,370マイルの方が価値が高いです。
疾病治療費用保険金として支払われました
クレジットカードをいろいろ見ていると「最高○千万円の海外旅行傷害保険付き」という宣伝文句をよく見かけると思います。しかし、最高○千万円が補償されるのは、「傷害死亡・後遺障害」と「賠償責任」くらいです。重要な「疾病治療費用」は50万円〜300万円ほどのことが多いです。
疾病治療費用は、病気になってしまったときのための補償制度で、今回のレスキューヘリ代と病院代も「疾病治療費用保険金」として支払われました。支払われた保険金は738,358円なので、海外旅行傷害保険の疾病治療費用の補償額がこれ以上付いているクレジットカードでないと補償が足りなかったことになります。
各クレジットカードの海外旅行傷害保険の補償額はこちらの記事で一覧表にまとめました。「疾病治療費用」の高い順に並べ替えることもできます。
海外旅行傷害保険付きのクレジットカードを複数枚持っている場合、疾病治療費用の補償額は合算されます。例えば、疾病治療費用が200万円のクレジットカードと、疾病治療費用が100万円のクレジットカードを持っていた場合、疾病治療費用は300万円まで補償されます。
海外に行くなら海外旅行傷害保険付きのクレジットカードを持っていこう
クレジットカード付帯の海外旅行傷害保険でもここまでしっかり対応してもらえました。今回のエベレスト街道トレッキングのように、ピッケルやアイゼンなどの専用の登山用具を使う必要がない海外トレッキングをよく楽しんでいる方であれば、海外旅行傷害保険重視でクレジットカードを選ぶのもいいかもしれません。「ライフスタイルに合ったクレジットカードを選ぼう」とはよく言われる言葉ですが、これも一つのライフスタイルに合ったクレジットカード選びと言えますね。
海外トレッキングをしないにしても、エポスカードのように年会費無料でも疾病治療費用の補償額が最高270万円もある海外旅行傷害保険が付いたクレジットカードもあるので、海外に行くなら海外旅行傷害保険付きのクレジットカードをぜひ持っていきましょう。
海外旅行傷害保険の内容を重視するならゴールドカードの方が選択肢は多いです。今回お世話になったアメックスが発行する、アメリカン・エキスプレス ・ゴールド・プリファード・カードは、海外旅行傷害保険に加え、手荷物宅配サービス(自宅対象空港、対象空港自宅)を利用でき、空港ラウンジも使えます。
清水 太郎
大手銀行系カード会社退職後、当サイトと世界一周ブログを運営しながら世界4周しました。旅をしたりしながらクレジットカードの情報を追いかけています。
Twitter:@k_creditcard